【ロンドン=橋本聡】英国は米国にもっと「ノー」と言うべきだ――英下院外交委員会が28日、英政府にそう勧告する報告書を公表した。チャーチル時代か ら60年以上、英米関係を表す言葉として使われてきた「特別な関係」も、「誤解を招くおそれがある」として使わないようにすることを求めている。

英政府がただちに対米路線を変えることはないが、米国に従って参戦したイラク戦争への反省や、米国がかつてほど英国を重視しなくなった時代の変化が勧告 には反映されている。

米英の「特別な関係」は、第2次大戦終結翌年の1946年3月、チャーチル元首相が冷戦の始まりを告げる演説で使って有名になった。元首相は、ソ連と対 抗するうえで英語を母国語とする英米の結束を呼びかけた。以後、歴代の英政権は「特別な関係」をたたえてきた。昨年1月のオバマ米大統領就任後に初めて電 話会談をしたブラウン首相も「『特別な関係』を維持し、強めていく」と話した。

しかし今回、外交委のマイク・ゲープス委員長らは、経済や軍事力が衰えた英国は「米国にとって、ほかの同盟国と比べて『特別』ではなくなった」と率直に 認めた。

さらにイラク戦争でブレア前首相が、ブッシュ前大統領の「プードル」(飼い犬の意)と国内外で酷評されたことを指摘。「特別な関係」も米国追従と受けと られ、「英国の名声と利益を深く傷つけている」と分析した。また、一部の政治家やメディアが「特別な関係」を使いすぎ、「非現実的な期待」を呼び起こして いると外交委は警鐘を鳴らした。

こうしたことから英政府に対し、「特別な関係」という表現を避けることや、意見が一致しない場合は「進んで米国にノーというべきだ」と勧告した。外交委 では与野党の5委員が勧告に反対したが、投票で退けたという。

大西洋の島国である英国は、ヨーロッパと米国の懸け橋を自任してきた。だが欧州連合(EU)が育ち、「大英帝国時代ならいざしらず、今はEU加盟27カ 国の一つ。英国だけでは何もできない」とフランス国際関係研究所(IFRI)のフィリップ・モロードファルジュ研究員。

一方、英外務省報道官は議会の勧告について「英米の関係をどう呼ぶかは、たいした問題ではない。大事なのは安全保障上も国益上も、ユニークで重要な関係 にあることだ」と述べている。