雑誌を電子化してネット上で販売する際に、作家や写真家らの著作権を一定期間に限って出版社に譲渡するガイドラインの大枠が、日本雑誌協会(雑協)と二つの著作権者団体の間で固まった。雑誌1冊分の著作権処理について、出版社と著作権者の間でガイドラインが設けられるのは初めて。煩雑な雑誌の著作権処理を円滑にすることで、電子雑誌の流通が促進されそうだ。

 ガイドライン案は、出版社95社が加盟する雑協が、日本文芸家協会(会員約2500人)と日本写真著作権協会(9団体加盟)に提案し、3月から協議を重ねてきた。条件などを詰めた後、文芸家協会の理事会で認められれば10月にも公表される。

 案によると、著作権が譲渡される期間は週刊誌が1カ月間、月刊誌が2カ月間、季刊誌が3カ月間。この間、電子雑誌分の原稿料は上乗せしない。期限を超えて電子雑誌を売る場合は、出版社と著作者が対価を支払うか個別に話し合うことになる。出版社は、この2団体に属する著作権者以外ともガイドラインを使った契約を結ぶことができる。

 雑誌の制作には筆者やカメラマンらを含め、1冊あたり100人から300人がかかわる。これまで電子雑誌を出すには、出版社がそれら権利者それぞれに条件を提示し、許諾を得ていた。今後はガイドラインを出発点に交渉することで権利者の理解を得やすくなり、より早く電子雑誌を出すことができる。権利者がガイドラインに合意しない場合は、個々に掲載条件を交渉することになる。

 ガイドラインは定期的に見直され、電子雑誌の売り上げが増えれば、出版社は原稿料の値上げなど権利者への還元を検討する見込みだ。また、電子書籍端末や配信サイトが次々と登場する中で、著作物が許諾なしにネット上に出回る可能性が指摘されている。こうした場合は、著作権を譲渡された出版社が対応できることになる。
 ガイドライン作成の背景には、紙の雑誌の市場が12年連続で減少している状況がある。現在の電子雑誌市場は「まだ市場と呼べる段階ですらない」(大手出版社幹部)ほど。しかし、普及への障害の一つと言われた著作権処理がスムーズに進めば、電子市場での雑誌の売り上げ増に結びつくという思いが出版社と著作権者を歩み寄らせた。消費者にとっても選択肢が広がる利点がある。

 一方で単行本については、日本書籍出版協会が電子書籍にかかわる契約書の「ひな型」作りを進めている。雑誌と単行本に一定のルールが整備されれば、電子書籍の普及にはずみがつくと出版業界は期待している。(高重治香)2010年9月12日3時6分