郵便不正事件、逮捕時報道の課題を議論 マスコミ倫理懇
 全国の新聞、出版社、放送局などでつくるマスコミ倫理懇談会全国協議会の第54回全国大会が9月30日、新潟市で開かれた。分科会では大阪地検特捜部による厚生労働省元局長の村木厚子氏=無罪確定=の逮捕当時の報道が課題となり、出席者から「検察の筋書きに乗ってしまっていなかったか、反省が必要だ」という意見が出された。

 特捜部は昨年6月、郵便不正事件にかかわっていたとして村木氏を逮捕した。村木氏は後に無罪が確定し、復職。主任検事による押収したフロッピーディスクのデータ改ざん問題も明らかになっている。

 しかし、逮捕当時は各社とも村木氏の不正関与の疑いを大きく報じた。分科会の出席者からは「そこまで無理な捜査をするとは思っていなかった」「特捜部から情報をとろうと苦労するうちに、特捜部と一体化してしまった」などと、捜査を疑問視する視点が欠けていたことへの反省の声が相次いだ。検察当局の見立てをうのみにしないよう、捜査対象者や関係者への取材が重要であることも確認した。出席した全国紙の司法担当記者は「頭の隅に無罪の可能性を置いて取材しようという空気を(社内で)共有するしかない」と語った。

 別の分科会では小沢一郎・民主党元幹事長を強制起訴するかどうかの判断が注目される検察審査会がテーマとなり、明石歩道橋事故やJR脱線事故をめぐる議決の取材にあたった神戸新聞社の霍見(つるみ)真一郎記者が経験を報告。「審査はブラックボックスの中だから議決の是非が検証できない」と課題を指摘し、任期終了後の審査員に記者会見に応じてほしい、などと提言した。